2023/07/16 08:56
蒸溜所内の階段上がるとフロアモルティングを行なっていて、ちょっと獣くさい匂いがします。
昔は3フロア、今は2フロア使っていて、(ちょっと自信ないですが)1フロアあたり3.5トンをモルティングしています。
ラフロイグでは自分のところで製麦したモルトを2割、残り8割はスコットランドの東から来たモルトを使っていますが、この2割の自家製麦がラフロイグ独特の香味をもたらしています。
スコッチウイスキーの蒸溜所でキルンがあるところは多いですが、実際にフロアモルティングしてキルンを使っているところは6つしかありません。
モルティングフロアにはいつも風が流れる海に面した南西側に窓があって、そこから風を取り入れて温度調節しています。
数時間おきにシャベルでかき混ぜ、発芽で温度が上がるのを冷やします。最初は重いのでシャベルでかき混ぜますが、その後は機械でかき混ぜます。何時間おき、というのがはっきり決まっているわけではなく、気候や温度を見ながら様子を伺いつつかき混ぜていきます。
麦を発芽させ、酒を作るために必要な砂糖に変わるスターチが麦の中に作られるようにし、一定程度発芽したら熱を加えて発芽を止める作業を行います。
フロアモルティングにかかる時間は、夏だと5日程度、冬だと6、7日かかるということです。冬は層を厚くして、温度を高めに保ちます。
階段を登って行くとピートを焚き込むためのキルンがあります。
このグレーチングの上にモルトを入れて、下からピートを焚き込みます。
見上げると、キルンの中には換気扇が取り付けられています。
階下の釜で16-18時間程度ピートを焚きます。12時間程度熱を加えて発芽を止め、その後時間をかけて燻してピート香をつけます。50度程度の温度でコールドスモークします。
ピートはアイラ島の空港の南のラフロイグ保有の土地から切り出したもので、圧縮せずにそのまま持ってきているので湿り気が残っている、いわゆるウェットピートと言われるものです。
アイラのウイスキーはピーティなことで有名ですが、それは狙ってそうしたわけではなく実は必然的にそうなったのです。
というのも石炭や石油を運んでくるにはアイラはあまりに遠すぎ、また島全体が荒地なので燃料にする木もなく、ウイスキー作りに必要な燃料は手で切り出したピートしかなかったのです。電気が島にくるのにも相当時間がかかりました。
1メートルの深さのピートができるのに1000年かかります。また炭素排出が問題になっているので、ピートが切り出された跡には表面に植物を植えて土壌を守り、二酸化炭素が再吸収されるようにしています。
ピート焚いて自家製麦しているのはアイラではラフロイグ、ボウモア、キルホーマンだけです。
ラフロイグでミルが置いてある場所は狭すぎてツアーでは入れませんでした。
1バッチ55000リットル(自信なし)マッシングを行いイースト活性化のため室温に冷まし、ウォートにイーストを加えて53〜70時間発酵させて、7-8%のウォッシュを作ります。
ウイスキーづくりのための水は、濾過なしで川から直接取っています。
ラフロイグのドラフ(麦の搾りかす)は、ピートが強すぎて牛乳がピート臭くなるので乳牛には与えられないそうです。
蒸留はフォアショット、スピリット、フェイントの3段階に分かれ、スピリットの部分だけが原酒になります。フォアショットが終わってスピリットを取り出すまでのカットのタイミングは通常の蒸溜所では10〜15分程度ですが、ラフロイグではフォアショットの時間を45分と非常に長めにとっています。とても非効率ですし、エネルギーも多く使いますが、濃縮されたアルコール蒸気を使うことはラフロイグのフルーティーな原酒を取るためには必要な工程です。
もう一つラフロイグの原酒がフルーティーでアロマティックな理由としては、スピリットスティルのラインアームが上向きになっていることで銅との接触が多くなっていることが挙げられます。
100年前にバーボンの樽をスコッチウイスキーの熟成に使い始めた一番初めの蒸溜所はラフロイグです。
現在一番売れているラフロイグは10年ではなくクォーターカスクです。昔は密造するのに便利だったのでクォーターカスクはよく使われていました。通常の樽と比べて3割程度原酒との接触面積が大きいため、熟成が早く進みます。
クォーターカスクは5〜7年熟成された原酒をクォーターカスクで6ヶ月追熟して作られます。10年、12年と決められた時間を特定の樽で熟成させるのはそれほど難しくないですが、複数の樽の木の特質を生かしていいウイスキーを作るのは難しいとのこと。ツアーガイドの方は現行のラフロイグではクォーターカスクが一番好きだとおっしゃっていました。セレクトはラフロイグの「導入」役、10年はイアンハンターのレシピをそのまま使っています。
シェリーオークフィニッシュは10年熟成のうちの最後の2年をシェリー樽で熟成させています。
海に面したウェアハウスNo.1には1万樽が眠っていて、すぐ横には海藻が打ち上げられてきてそれがヨード臭をもたらします。ガルフストリームのせいでアイラ島は暖かく、冬でも温度が安定しているので熟成にも向いています。
ウェアハウスNo.1から出てきた時、明らかに熟成庫の外側の空気が独特の潮の香りとヨード臭がすることに改めて気づきました。
その後、ウェアハウスNo.1の中でのウェアハウステイスティングに参加しました。
バリンチで樽から原酒をとって、ジャグに注いでみんなのグラスに入れてくれます。
カナダ人の団体と一緒になりましたが、相当ウイスキーに詳しくてびっくりしました。
ファーストフィルバーボンカスクでウェアハウスNo.8にて7年熟成されたカスク4749をまず試飲。
コマスピで扱ったのは2013年のファーストフィルバーボンバレルのウェアハウスNo.1熟成ですが、よく知っている味がします(笑)
二つ目はチャード(トーストではない)ヴァージンフレンチオーク2016年蒸留7年熟成。コマスピの扱いはミディアムトーストのヴァージンフレンチオーク、2014年蒸留8年熟成でした。
流石にチャーで直火で中を焼くと、色が濃いですね。トーストはヒーターで樽を焦がします。
最後に飲んだのは、「これどんな樽か当ててみて?」と言われて誰も当たらなかった、チャードフィノカスク。フィノの樽をチャーすることなどほとんどないので、当たるわけないじゃん。
これもめちゃくちゃ色が濃かった。
一番気に入ったものを200mlバリンチで樽からハンドフィルできるのですが、私は最後に飲んだチャードフィノカスクが好きだったのでそれをお持ち帰りしました。