2025/05/20 13:59


(写真は記事とは一切関係ありません)


 海外ではウイスキー樽投資詐欺のニュースが最近多くなっています。

投資を行う際にデューデリジェンスを行う、つまり投資対象物の本当の価値や、関わっている人たちが信用に値する人たちかどうかなどリスクの有無を調べる作業を行うのは投資家として「イロハのイ」なのですが、ウイスキー樽詐欺の場合、ウイスキーの特徴を上手に活かして(?)詐欺行為が行われてきたことが明らかになってきました。

具体的には、「ウイスキーは長期投資、長く保有すればその分リターンが上がる」との言葉を鵜呑みにして投資したままほったらかしにして被害に気づくのが遅れたり、前回説明したDelivery Orderの仕組みを知らず、売り手と買い手の間の二者間での売買契約書で樽の所有権が完全に移転したと勘違いしたり、もともと密造酒だったウイスキーの蒸溜所や保管倉庫はあえて見つかりにくいアクセスの悪いところにあって詐欺が発覚しにくい、などです。

BBCでは「ウイスキー樽詐欺で末期がんの私の蓄えを失った」という記事で、ウイスキー樽投資詐欺での被害者が数百人、被害額が数百万ポンドだと伝えています。
具体的には警察が「Cask Whisky Ltd」「Cask Spirits Global Ltd」「Whisky Scotland」の3社を詐欺の疑いで捜査中とのこと。

Cask Whisky LtdとCask Spirits Global Ltdは以前にも兄弟と620万ポンドの詐欺を働いて服役した人物が運営していた会社で、200人の被害者がいるそうです。

その被害者のうちの一人は、103000ポンドを投資したにもかかわらず、
 - 買ったはずの樽を売りたい、と会社に連絡しても電話に出なくなった
 - 保税倉庫に連絡したらあるべきはずの樽が存在しなかった
 - 買ったはずの4樽のうち、2つはウェアハウスで見つかったが他人の名義、1つは誰かに買われて出庫してしまっていた
 - 49500ポンドで買ったはずの一番高い樽は存在しなかった
とコメントしています。

Whisky Scotlandの被害者の一人は末期がんの患者で、子どもたちに資産を残そうと家を売った代金のうちおよそ76000ポンドをWhisky Scotland社を通じてウイスキー7樽に投資したそうですが、2樽は存在せず、5樽は実際の価値より相当高い金額で買わされていたそうです。

真面目にウイスキーブローカーのビジネスを行っている人にも間接的な被害が及んでいます。
そういう真面目な人たちにも疑いの眼差しが向けられている上、詐欺に遭って投資した樽のありかを探す被害者からの問い合わせが続いているとのこと。

アイルランドでも、警察が「組織犯罪の資金源となっている可能性があるウイスキー詐欺の被害者は地元の警察に名乗り出るように」と呼びかけている、とThe Irish Timesの記事が報じています。

実際の価値よりも非常に高額で樽を買わされる、買った樽が存在しない、買ったはずの樽が別の人にも二重譲渡されている、などの手口だそうです。

ウイスキー樽投資詐欺以外にも、犯罪組織による組織的かつ大規模なフェイクボトル作りが行われていることも指摘されています。

オールドウイスキーの空き瓶に詰め替えてオークションで売る、みたいなセコい(?)詐欺ではなく、フェイクのオールドボトルを作るために工場に偽のボトルとラベルを大量発注し、それらしい原酒をボトリングして「オールドボトル」として販売する、という大胆かつ組織的な手口です。

Noble & Coという投資銀行のレポート*でウイスキー鑑定会社Wisgyの代表が答えているのを読みましたが、国際紛争で多額の戦費を調達しないといけない地域で組織的な偽オールドボトルづくりが行われて二次流通市場つまりオークションで売られている、と指摘されています。かなり精巧なもののようです。おそロシア…。

また中国国内でもフェイクボトルの販売が広がっているという指摘もありました。

この話題、引き続きモニターしていこうと思います。



ちなみにこの手のブログ書いているのは、古事記にも「奈良時代で一番イケてるビジネスモデル」として取り上げられ小野妹子も絶賛している日本古来の「紙芝居商法」、すなわち原っぱや公園におじさんがきて子どもを集めて、面白い紙芝居で惹きつけて型抜きや駄菓子などを買ってもらう商法の令和版リメイクです。